合理的配慮の義務化が求めているものは何か
さて、前回の記事では「障害者差別解消法」が改正され、民間事業者の
「合理的配慮」提供が義務化されたという話題を取り上げました。
私も車いすを用いる障害者の一人として今回の改正を嬉しく思います。
一方、気になることもあります。というのは、「民間事業者」に
新たな「法的義務を課した」ということだけを見ると、
この法律が私たちひとりひとりに何を求めたのか、一番大事なところが
見えなくなってしまうと考えるからです。
「合理的配慮」はもともと、「障害者権利条約」で定めている
"Reasonable accommodation"という語を日本語にしたものです。
"Reasonable"は、「理にかなった、筋の通っている」
"accommodation"は「調整」を意味します。
合理的配慮の提供に当たっては、事業者の事情だけではなく
何よりまず、提供を求めた側のニーズを踏まえた上でなされる必要があります。
また、「できない」ことについて「できない」ということは可能ですが、
当事者双方にとって筋が通っていることが必要です。
このように事業者に一方的な負担を求めるものではありません。
一方、配慮の提供を求める側からみると、配慮を求める権利は保障されていますが
要望した内容がいつでも、何でも満たされるとは限りません。
要望が通らなかったからといって、それが直ちに「差別」となるわけでは
ありません。
障害者差別解消法の特徴は、障害のある人々を取り巻く差別を
人と人の関わりの中に見出し、「対話」と「調整」によって
差別を解消し、すべての人々の権利を保障しようという作りに
なっていることです。
合理的配慮を求める権利が保障され、提供する義務が課される。
それは障害の有無に関わらず、等しく扱われる、
暖かくも厳しい社会でもあるのです。