楽しいおでかけのできる環境を守る
昨年から大阪富田林の金剛バスの全面廃止、東海道新幹線の車内販売廃止、
伊予鉄道坊っちゃん列車の運休など交通関係で厳しいニュースが続いています。
いずれも「働き手が足りない」ことがその理由と言われています。
働く人が集まらないこともさることながら、車内販売では利用者の減少、
バスでは、現行運賃のもとでの経費高騰に伴う採算悪化が伝えられています。
例えば、路線バスが廃止になった大阪・富田林市は、人口およそ10万人。
政令指定都市の堺市に隣接しています。
坊っちゃん列車の運休が話題になった松山市は、人口50万、
愛媛県の県庁所在地であるとともに観光地の道後を擁しています。
坊ちゃん列車だけでなく、港と松山市街を結ぶリムジンバスは片道運行の一日3便。
市内電車も便数減。利用がないのではありません。人はたくさん乗っています。
それでも、便数が減り、あるいは無くなります。
こうした状況を見るにつけ、利用者も、どのように公共交通を守っていくか、について
考えていく必要があるように思います。
これからの時代、利用して、あるいはお金を払って自分たちで支えない限り、
電車もバスもそのほかのお店やサービスも消えていきます。
無くなりそうになってから「残念だぁ」と言ってみても遅いのです。
長年、ツアーセンターのブログでは、お出かけ情報と合わせて
駅や施設の新・改築、バリアフリー対応の新型車両、新型船の導入など
交通のバリアフリーに注目してきました。
ハードの整備は大事です。交通機関のバリアフリー化が不十分だと、
出かけたいと思っても、自由に出かけられない。「出かけたい」、という気持ちがあって、
出かけようと思った時に、交通機関がバリアフリー化されていてスムーズに利用ができる。
そのことはとても大事です。
利用の多寡に関わらず、誰でも・いつでも利用できる設備があることは
確かに望ましい姿かもしれません。一方でそうした設備を設け、維持していくには
相応のコストがかかることもまた事実です。
これからは改善されたものを「どう活かすか」、
平たく言えば「どれだけ使っているか」が大事です。
「使う人」がいるからこそ、バリアフリー化が必要とされ、
バリアフリーは、「使われること」で完成するからです。
障害者や高齢者を含め、人々が自由で活発に移動するようになれば、
未だバリアフリー化が不十分な地域の後押しにもなるでしょう。
この点、松山に出かけた際、フェリーでゆったり過ごせるのは快適だけれども、
せっかく新しい船も入ったのだし、もう少し利用があってもよいのではないか、
とも思っていました。
地域の足を守るためには、これまで利用意向がなかった人にも、
サービスを知ってもらうことが必要です。
例えば、車椅子で電車に乗れることを知らない人は、車椅子で電車に乗りません。
切符の買い方を知らない人は電車に乗りません。車をお持ちなら車で移動するでしょう。
あるいは、休日に出かける習慣のない方は、そもそも休みの日に出かけようとは思いません。
普段やらないことや知らないことは頭に浮かんで来ません。浮かんで来ないものは
行動の選択肢として選ぶことができないのです。
過去の記事で、時刻表の読み方や切符の買い方を取り上げた理由はそこにあります。
あるいは各地に出かけた【お出かけ情報】を載せるのも、
社会の中でバリアフリー整備が進むことによって、電車で、自動車で、フェリーで
お出かけできるようになったことを、多くの方に知っていただきたい。
あるいは、休日の過ごし方のひとつとして、お出かけを楽しんでいただきたいのです。
ひとりひとりの楽しいおでかけは、生活を潤いあるものにするだけでなく、
「おでかけできる環境」を支える力でもあります。
このブログでお届けする情報が、記事をご覧になっている皆さんの
おでかけの役に立てばと思います。