歴史的建造物とバリアフリー ー有識者、広島城天守閣について広島市へ最終意見。3/2付け中国新聞
早くも3月ですね。瀬戸口です。今日の話題は3/2付け中国新聞より。
天守閣「木造復元を」 広島城有識者会議、市に最終意見
https://www.chugoku-np.co.jp/
広島城は広島市内の文字どおり中心にあります。現在は周囲を公園や官公庁に
囲まれている、緑豊かな都会のオアシスです。原爆投下時には、
爆心地に近かったこともあり威容を誇った天守閣も破壊されてしまいます。
1958年、復興のシンボルとして当時の最新技術であった鉄筋コンクリートで
天守閣が再建され現在にいたります。と、ここまでは比較的よく知られています。
今回、有識者による検討会議は、地震対策や史跡の保存、
観光等での活用を踏まえた魅力向上などの点から、
天守閣の木造復元について検討するよう広島市に最終意見を提出した、
というのが今回のニュースです。
歴史的建造物の復元・再建にあたり、つとに課題となるものの一つが
バリアフリーです。
広島よりも先に天守閣の復元にむけて動き出した名古屋市が
エレベーターなしの木造復元を発表したことで、
エレベーター設置を求める人々と、史実通りの復元を求める人々の
激しい議論がいまも続いているようで、 2022年末の完成は断念されたそうです。
広島でも木造復元を案として検討することは良いと思います。
その際、考えなければならないのは、なんのための「お城」を
作るのか、ということだと思います。
そもそも「お城」は人を寄せ付けないための施設ですから、
昔のままの形に作れば「バリアの塊」として出来上がるでしょうし
バリアフリー機能を持たせるような余裕のある設計ではないでしょう。
そうであるなら、多くの人々に「見て・触れて」もらうことを目的とする
観光施設としては、不向きなものになるかもしれません。
一方、単純にバリアフリー設備を完備した近代的な建物であればよいかといえば
そうではありません。なぜなら、それでは「天守閣の恰好をしたビル」であって
観光施設としてはよくても、史跡としての歴史の保存・継承ができません。
ですから、何を伝え、残していくのか、何を変えていくのかということを
原点として、将来にわたって、伝え、残されてゆくものについては、
障害の有無や年齢に関わらず一つの場に集い・憩い・触れ・感じられるような
配慮が必要です。
そうした配慮・工夫の手段の一つとしての「木造復元」、「バリアフリー整備」で
あるという視点のもとで事業が進んでいくとよいな、と思います。