「出雲そば」とは割子と釜あげ?!
ハウル@矢野です。
味覚の秋ともなれば食欲は増すばかりですね。
ここ出雲地方では中山間地の棚田で生育したお米とそばではないかと思います。
棚田は、そもそもたたら製鉄で山を削った後を水田としました。通常では山の頂上近くには水がありませんので水田にはなりませんが、ここ奥出雲ではため池や水の利用が後跡出来るようにしたからこその棚田なのです。
また、出雲地方の食文化の一つである「出雲そば」は、その最大の特徴は、従来のそばと比較して黒っぽいそばとその食べ方にあります。
通常そば粉をつくる時は、殻を取ったそばの実を一番粉から四番粉に分類します。そばの実の中心に行くほど白くなり、どの場所を使うかによって色や香りが変わってきますが、出雲そばは粉の選別をせず、玄そば(殻のついたそばの実)をそのまま製粉します。
そのため色は黒っぽいですが、香り高く、風味と独特の食感のあるそばが出来上がります。
出雲地方に数多くある出雲そばの店、それぞれに違いとこだわりがあります。郷土色豊かな出雲そばの食べ歩きや、店ごとのそばつゆの違いを比べるのも、出雲の旅の楽しみ方の一つです。
食べ方には大きく分けて、冷たい「割子そば」と温かい「釜揚げそば」があり、どちらも共通してそばつゆをかけていただきます。それぞれの特徴と食し方をご紹介します。
割子そば
出雲そばと聞いて、この丸く重なった器に入ったそばを想像する方も多いのではないでしょうか。
江戸時代、出雲地方の松江では野外でそばを食べるために、弁当のように重箱にそばを入れていました。この地方では当時重箱のことを割子と呼んでおり、形も四角いものが多かったといいます。しかし四角形だと隅が洗いにくく、衛生上良くないということから、今のような丸い形になったそうです。
そして食べる直前に器の中にそばつゆを直接かけて食していました。その当時の形式が、今に引き継がれているのです。
一般的な割子そばの食べ方
薬味は主にねぎ、のり、もみじおろし、かつおぶしなど。(お店によって多少違いがあります。)
そばにお好みで薬味をのせ、徳利に入った「そばつゆ」を上からさっと回しかけ、そばとなじませていただきます。(そばつゆの量はお好みで調節してください)
一段目を食べ終わったら、器に残ったそばつゆを二段目の器に移し、さらにそばつゆと薬味を足していただきます。その繰り返しで、最後までお楽しみください。
もちろんそば湯もお忘れなく。こちらもお好みでつゆを入れてお召し上がりください。(そば湯はお店で言うといただけます)
割子そばが松江の発祥であるのに対し、温かい釜揚げそばの発祥は出雲大社だと言われています。
全国から神様が一堂に会すると言われている10月、出雲大社では「神在祭」が執り行われますが、昔はこのお祭りの際に大社の周りに屋台が出て、温かい釜揚げで新蕎麦を振舞っていたといいます。
通常、そばは茹でた後に水洗いをしますが、屋台売りのため都度洗うわけにはいかず、鍋や釜から茹でたそばを器に盛り、とろみのあるそば湯を入れ、つゆや薬味をかけて食べていたようです。
そのスタイルが今に残り、割子そばと並んで出雲そばの代表的な食べ方になりました。
割子同様、自分でつゆを入れて味を調節できるのが特徴で、そばの栄養が溶け出したそば湯は栄養価が高く、健康食品としても注目されています。
出雲大社のお膝元で作られた食文化、とろっとしたそば湯に浸かった香り高い出雲そばを食べながら、神代の出雲に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。